REPORT

報告レポート

対話型鑑賞およびワークショップの報告

2018/12/07更新 REPORT カミジョウミカ

信州ミュージアム・ネットワーク『シンビズム2』ワーキンググループ
学芸員 長尾 小百合

平成30年11月8日から16日にかけ、松本市立明善小学校および松本市立二子小学校にて対話型鑑賞およびワークショップを行いましたので、ご報告いたします。

1.実施日等

  • 11月8日(木) 3時間目~4時間目
    • 10:45~11:30 二子小学校 6年1組 児童27名 担任 原 光司 先生
    • 11:35~12:20 二子小学校 6年2組 児童26名 担任 末次 さとみ 先生
  • 11月12日(月) 5時間目
    • 13:40~14:25 明善小学校 4年2組 児童27名 担任 西澤 俊輔 先生
  • 11月13日(火) 5時間目
    • 13:40~14:25 明善小学校 4年3組 児童27名 担任 清水 香代 先生
  • 11月15日(木) 3時間目~4時間目および5時間目
    • 10:45~11:30 二子小学校 1年1組 児童22名 担任 山口 弘子 先生
    • 11:35~12:20 二子小学校 1年2組 児童22名 担任 瓜生 かよ 先生
    • 13:40~14:25 明善小学校 4年1組 児童27名 担任 矢口 貴子 先生
  • 11月16日(金) 3時間目~4時間目
    • 10:45~11:30 二子小学校 3年1組 児童18名 担任 細山 ゆかり 先生
    • 11:35~12:29 二子小学校 3年2組 児童18名 担任 髙山 賢司 先生

2.実施校等

  • 松本市立明善小学校
    • 〒399-0021 長野県松本市寿豊丘813-7
    • 校長 大池 昌弘 先生、教頭 柳生 さよ美 先生
  • 松本市立二子小学校
    • 〒399-0033 長野県松本市笹賀5921
    • 校長 奈良井 範久 先生、教頭 村上 きよみ 先生

3.実施内容

『シンビズム2』関連事業(教育普及)
◆対話型鑑賞

【目的】

  • (1)普段なかなか目に触れる機会の無い原画を前に、自由に印象を話し、児童間で共有することにより、作品に広がりをもって鑑賞することができる。
  • (2)心に映る印象を言語化することにより、他者に思いを伝える学びへとつながる。③学芸員が作家の制作背景をヒント的に伝えることで、作品を別の角度から眺めることができる。

【方法】

  • (1)シンビズム2出展作家である、カミジョウミカ氏の原画(3点)を借用し、学芸員がファシリテータ役(進行)となって、児童とともに対話しながら鑑賞する。
  • (2)見方を強制するものではないので、答えを求めず自由に印象を話し合う。この時学芸員は児童の自由な学びを邪魔しない。鑑賞の流れは下記のとおりである。
  • [ⅰ](5分)自己紹介、鑑賞の流れについて説明
  • [ⅱ](2分)学芸員は作品展示→児童は作品前に移動→じっくりと作品を見る
  • [ⅲ](2分)児童は席に移動→班で印象を話し合う
  • [ⅳ](5分)全体で印象を話し合う→学芸員がファシリテーターとして会話をつなげ、印象を共有する。《他2作品も、ⅱ~ⅳの流れで行う》
  • [ⅴ](13分)学芸員から質問→学芸員が制作背景を話す→再度全体で気づいたことを話す→終了

児童の様子

(1)導入

  • 美術館に行ったことがあるか質問すると、6年生では半数以上が美術館に行ったことがあるが、1年生~4年生では各クラス3~5名程度であった。そのため、作品鑑賞のマナーについて再確認(問いかけ:「長く大勢の人に見てもらえるよう、作品を大事にしたいね。そのためにはどうしたらいい?」)をした。「触らない」ことは児童も理解していたので、マナーを守って、友達や学芸員に印象を伝えながら楽しそうに鑑賞することができた。
  • 初めて作品鑑賞をする児童が多いため、固定概念にとらわれず、感性を研ぎ澄ませて鑑賞できるよう、まず「美術には〇とか×はない」と伝えた。正解がなく、いろんな考えを受け止めてくれるのが美術の魅力であることを伝えたため、自分の心に映った生の声を素直に伝えることができた。6年生以外はほぼ全員発言が挙手し、発言した。

(2)作品鑑賞

  • 学年ごとに反応の差は見られるが、特に6年生は全員が発言しなくとも、班で話し合う際に自分の考えを伝えることができていた。
  • 最初に3点全て展示するのではなく、1点ずつ集中して、他児と印象を共有しながら鑑賞を進めていくことで、「次はどんな作品が見れるのかな?」と期待感を持ち、主体的に授業に臨むことができた。
  • 学芸員からは当初、作品タイトルや、作家について伝えなかった。進行の中で、「カミジョウミカさんはどんな人なのかな?」「みんなならどんなタイトルをつける?」などと、考える授業を心がけた。導入で、予備知識を与えない理由を話した(いろんな考えで作品を見てほしい旨)ため、混乱なく進行できた。
  • 作品は、3点まったく違う作品を選んだ。〈土星人がわーっと集まった深夜〉は、モノクロで、文字とふしぎないきものが細かく描かれた作品。〈うずまくゆかいなヨーカイ〉は、カラフルで、想像上のヨーカイが細かく描かれた作品である。

下記に3点目の〈細胞核なんだって〉につき、児童の発言の一端を紹介する。

作品名:〈細胞核なんだって〉

カミジョウミカ 作品名:〈細胞核なんだって〉

児童の感想

A「黄色と赤の線が、オムライスみたい。」

B「僕は宇宙の光線にみえたよ。」

C「太陽の線じゃない?」

A「なんでお薬のカラが貼ってあるの?」

B「リサイクルじゃない?」

C「病気にならないように。」

A「これも絵なの?」

学芸員「どう思う?だってこれはさっきの作品とちがって、線ばっかりだし、お薬までつけちゃったもんね。そういう疑問、とっても大事なんだよ。」

(3)作家紹介等

  • 〈細胞核なんだって〉鑑賞時、学芸員から「この薬のカラは誰のなんだろね。」と投げかけた。児童が反応した後に、「実はミカさんは骨が勝手に曲がってしまうという難しい病気にかかっているんだ。」と作家について話した。作品から作家を考える流れが分かりやすかったのか、真剣に興味深く聞いてくれ、さまざまな質問を受けた。
  • 「土星人がわーっと集まった深夜」は非常に仔細に描かれた作品だが、細かく描けば描くほど痛みを忘れるという作家の言葉を児童に紹介した。「細胞核なんだって」に貼られた数えきれないほどの薬のパッケージと合わせ、作家の病気につき、深く考えることができた。
  • 「大変な病気なのに、なぜ描き続けるのか?」という問いには、「みんなに病気の大変さを知ってもらいたいから。」「描くことが好きだから。」「描くことで、生きてることをみんなに伝えたかったから。」など、各々考えることができた。
  • 学芸員からは、ミカさんに会いに行くには、時間を選ばなければいけないこと(薬の時間があるため)、毎日夢で見たことを描き続けていること、作家の性格など、生の姿を話すようにした。画家は自分とは違う次元に存在すると思っていた子どもにとって、より身近な存在として受け止めてくれたと思う。
対話型鑑賞のようす

対話型鑑賞のようす1

対話型鑑賞のようす

対話型鑑賞のようす2

課題

  • ひとの気持ちを慮ることが難しかったり、創造力が乏しい児童にとっては、難しい授業であったかもしれないが、作品を見ることは純粋に楽しめてはいた。見た目に分かりやすい、「〇〇が、さっきの作品と違う」など、細かな相違までに気付くことができた。ただ、人の意見に耳を傾け、同調したり、自分の考えとすり合わせることは難しいため、短時間(15分程)でも継続的に対話型鑑賞を続けていくことで、創造力を高めたり、他者の意見に耳を傾けるトレーニングになると思う。
  • 6年生は、挙手して発言することに抵抗があるが、班で話し合う形式にしたため、自分の意見は伝えることができていた。ただ、話し合う時間が長く、沈黙する班もあったため、早めにワークショップを行ってアウトプットに移ったり、作家について丁寧に語っても良かった。各学年で興味の対象や理解度が異なるため、時間配分は臨機応変に調整したい。

◆ワークショップ

「ユカイ ヨーカイ ブキミな世界~カラフルなヨーカイをかこう!」

目的

  • (1)カミジョウミカ氏の作品を深く鑑賞して得た印象のアウトプットとして、夢の中、空想の世界にいそうなフシギないきものを描き、作品に対する理解を深める。
  • (2)制作した作品は、展覧会会期中、辰野美術館にて展示し、大勢の方に見ていただく機会とする。作家も同様に制作し、一般参加者の作品とともに一枚の絵として仕上げる。貴校児童の作品が、さらなる作品の一部となることで、制作への関心を高め、達成感を味わう。

方法

  • (1)支持体は名刺紙とし、自分の見た夢の中、空想の世界にいるいきものを描く。画材は、鉛筆・カラーサインペン・クーピーを基本とする。
  • (2)制作品は作家によりレイアウトされ、辰野美術館エントランスの壁面に一同に展示。一枚の絵として完成する。

展覧会場・会期

  • 辰野美術館 住所: 〒399-0425長野県辰野町樋口 2407-1 電話: 0266-43-0753
  • 会期:平成30年12月1日(土)~ 12月24日(月・祝)
展示の様子(辰野美術館 エントランス)

展示の様子(辰野美術館 エントランス)

児童の様子

  • 自分の作品が美術館に展示されるということで、意欲的に取り組んでくれた。
  • 1~4年生は、空想的で主観的な主題を選んでいるが、6年生はデザイン的な作品が多く、作家の作風にインスパイアされて描いている様子が伺えた。
  • どの作品も重なるものがなく、普段児童を接している私としては、意外性を感じた。児童の普段とは違った一面を垣間見ることができた。

4.総括

 今回、松本市立明善小学校、松本市立二子小学校の先生方のご理解とご協力が無ければ成立しない事業だった。ご協力いただいた校長先生はじめ教頭先生およびご担任の先生方に心よりお礼申し上げます。

 また、作家・カミジョウミカ氏は、小学生に自分の作品を見てもらいたいと、美術館以外の場所にも関わらず作品を快くお貸しくださった。重ねてお礼申し上げます。

 どの児童も積極的に授業に関わろうとし、終了後も「もっと作品を見たい」とせがむ姿があった。原画の持つ魅力が児童に十分伝わったように感じる。

 鑑賞とワークショップという、密な内容だったが、作品を見た後すぐに制作したため、創作意欲を欠かないまま、制作に没頭できていたように思う。また、支持体の大きさも、名刺大という取り組みやすいサイズだったため、比較的容易に取り組めたと感じた。

 美術館に行ったことのない児童も多かったが、今回をきっかけに、美術をより身近に感じる機会となれば幸いである。

以上

ここcurator