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肖像彫刻の動物たち

OOSONE Shunsuke

漆彫刻

大曽根 俊輔

OOSONE Shunsuke

漆彫刻

大曽根 俊輔

Read in English Text

When I was engaged in restoration on images of Buddha, I had an opportunity to work on one in particular created by a rather special technique using dried lacquer, placed in a temple in Nara from the Tempyo Period.
There, I produced a statue of an animal out of a log left in the temple, which was my starting point for producing animal statues.

I think one of the charms of dry-lacquered sculpture is that it conveys the best of both characteristics of wood carvings and clay works: one is “impulse”-- a characteristic used in carving wood, the other being “softness”-- a characteristic evident in clay works.

I would like to continue portraying the animals I encounter with an aim to create my works expressed by more than mere technique.

主な経歴

Career

1978
神奈川県生まれ
2002
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科木工専攻卒業
2004
東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻修了
公益財団法人 美術院 国宝修理所入社
2015
公益財団法人 美術院 国宝修理所退社
長野県松本市へ移住、「工房茶虎」開設

主な作品発表歴

Release

2009
個展「MADE IN BIWAKO HOUSE」(にじ画廊/東京都)
2010
個展「BANANA ZOO」(Casa de Banano/京都府)
2012
個展「DEAR MY BOO」(オソブランコ/大阪府)
2013
個展「シロクマベーカリー」(オソブランコ/大阪府)
2014
個展「Manatee Boku」(オソブランコ/大阪府)
個展「manatee manatee」(熱川バナナワニ園/静岡県)
2017
個展「kuranimal」(池上邸 蔵/松本市)
2019
個展「動物の乾漆彫刻」(ギャラリー石榴/東京都)
個展「動物の乾漆彫刻」(ギャラリー石榴/松本市)

肖像彫刻の動物たち

学芸員の解説

私たちの動物に対する認識は、思っている以上に、いいかげんなもののようだ。私たちは、それらしいイメージに描かれていたり、作られているものをみるとき、その特徴をもって、ある動物として認識するのではないか。ましてや、細部まで精密に作られていれば、そこに強いリアリティを感じるだろう。その一方で、剥製にされた動物たちに、かえって作りもののようなうさん臭さを感じないだろうか。これは、私たちが個々の動物の個性について無自覚なため、あからさまになったその模様やツノのような独自の形状や色彩といった特徴が、類型化して認識していたものと異なるため違和感を感じるのではないか。ヒトという別の種の生き物の認識として、当然のことであろう。動物を主題として制作する作家は、その個性をどこまで重視しているのだろうか。
大曽根俊輔は、制作にあたって取材の時間をとくに大切にするという。動物たちのさまざまな表情をみつけるその瞬間に、制作を続けることの喜びを感じるらしい。空想上の生き物を作り出したり、想像で制作を進めるのではなく、大曽根は動物に直接向かい合い、会話をするようにスケッチを重ねながら制作している。
ミニブタのブーちゃん、カバのツグミ、マナティのボク、陸ガメのアップルさん。どの動物たちにも実在のモデルがおり、共通してボリュームに満ちたプロポーションをしている。彼らは動物園や牛舎の動物たちなのだ。大曽根が作り出した作品からは、晴れた休日の昼下がりのような、ゆるやかな時の流れを感じる。
木、石、粘土といった素材で、ほ乳類の全身を覆う体毛を一本一本細かく表現することは困難な作業だろう。大曽根が生み出した動物たちにも、一本ごとのふさふさとした体毛はない。ミニブタのブーちゃんの背面に、大曽根は逆立ったタテガミを思わせる木彫りを施した。また、細部に至っては作家の手の痕跡すら残している。あえて残されたその痕跡は、作家の遊び心を伝えこそすれ、作品を台無しにするものではない。それらは作品たちに命を吹き込んだ痕跡であるかのようだ。いまにも動き出しそうな彫刻となったのは、作者が何度も観察を重ね、動物たちの存在を自分のものに咀嚼した結果に違いない。大曽根は、自身の動物彫刻を肖像彫刻としてとらえ、彼らの個性を大切にとらえている。
神奈川県に生まれた大曽根は、武蔵野美術大学で家具の制作を学び、東京藝術大学大学院で文化財の修復を修了した。文化財の修復に携わるなかで覚えた乾漆の技法を用いてこれらの動物たちを生み出している。
乾漆の技法はあらゆるものの造型を可能にしている。伝統的には奈良の興福寺の阿修羅像のように、木や粘土を基礎に、麻布を漆で張り重ねてモデリングを進める。成形の後、内部の粘土を抜き出すと、軽くかつ頑丈な造形となる。これが奈良時代に多くの仏像制作に用いられた脱活乾漆と呼ばれる技法である。スタイロフォームなどの、取り扱いが容易で軽い新素材を基礎に用い、重力に反するような、一見すると柔軟で軽そうな立体物を制作する現代作家もいる。乾漆は、木や石や金属のように素材の重さや硬さ、粘土やガラスのような軟らかさ、成形時に必要な焼成や鋳造にともなう高熱など、制作の際に制限される要因が少なく、完成後も頑丈であることから、古来自由な造形に用いられてきた。現在でも立体造形を志す芸術家から注目される技法のひとつである。
大曽根は、脱活乾漆や木彫を基礎とし、そこにさらに木屑を混ぜた漆を盛り付け成形する木芯乾漆の技法を用いている。作品には、可能であればモデルとなった動物の一部を納めるという。取材を重ねるなかで知り合いとなった飼育員から、動物たちの体毛などを分けてもらえることがあるようだ。作品に魂を入れ込む祈りに似たこの行為により、ますますモデルとなった動物たちへの愛着が増し、その動物の肖像が完成していくのであろう。
今後作りたいものを尋ねると、大曽根は迷うことなくクロチョウビと答えた。それは黒蝶尾という名前のとおり、大きな蝶のような尾びれを持ち、飛び出した目とずんぐりとした胴体が特徴の金魚である。なるほど、大曽根が創作の意欲が湧くというスタイルを持ち合わせた生き物だ。工房で飼育しながら作品を制作するという。大曽根の作る黒蝶尾は、観る者の心をとらえ、そのなかに棲み着きかねない魅力を備えることだろう。

三澤 新弥(安曇野市教育委員会)

Exhibition Artists & Hall

Takahashi Setsuro A Museum of Azumino

2019/09/21 - 2019/10/14

終了しました。

2019.09.21(土) - 10.14(月・祝)

安曇野髙橋節郎記念美術館 旧高橋家住宅主屋・南の蔵

安曇野髙橋節郎記念美術館 旧高橋家住宅主屋・南の蔵

出展作家